成功体験を言語化し、共有することの意味
こんにちは、homie株式会社の不動産営業DXおじさんこときのしたです。
営業力育成に悩んでいる会社様とお話をしていると、営業は属人的だから共通項の抽出は難しい。優秀な営業は感覚でやっているから言語化できない。という声を聞くことがあります。
また、そもそも営業同士がライバルだから成功事例を共有しようとしない。上司が話す事例が武勇伝になっていて汎用性がない。そんな話も聞きます。
私は、”組織で戦う”ということを大事にしているので、仕事の棚卸しと共有を非常に重視しています。個々人の能力開発と組織開発双方に良い影響を与えるからです。今回は、そのことについて書いてみます。
リクルートがひたすら成功事例の共有をする理由
私が新卒で入ったリクルートという会社は、とにかく共有するという文化が強いことで有名です。そして、”横展開”という言葉が大好きです。
表彰者(MVPなど)は表彰理由について自分で整理して発表しますし、ベストプラクティスコンテスト(通称ベスプラ)では、半年間で一番良い仕事を自分で抽出し、全員の前でプレゼンしていました。
通期・四半期・月間で行われる表彰は、組織として大事にしたいこと・推し進めたいこと(≒戦略テーマ)について称賛し、共有することが意識されています。そして表彰者自身が、そのテーマに対しての成功事例や、プロセス・考え方を共有することで”良い仕事”の目線を合わせることで、個々人の動きのレベルを引き上げること(=組織の価値提供力Up)を狙っていたと解釈しています。
ベスプラの場合は、予選を勝ち抜いていくと、必ず部長がアドバイスに入ります。どこを重点的に伝えるのか、何をポイントにするのか、どんなキーワードに落とし込むのか。個人の仕事を組織での発信レベルにまでブラッシュUpしていきます。そして、グランプリを受賞した内容が、新しく組織が目指すアタリマエになっていきます。
その流れの中で、組織のアタリマエレベルが引き上がっていきます。私は、一度設定した高いレベルでのアタリマエを積極的に壊し、組織のアタリマエレベルを上げ続けていることにリクルートの営業の強さがある(あった?)と考えています。
個人が競い合う文化の中で共有する意味は?
住宅・不動産業界に限らず、個々人の営業がライバル関係にあり、ノウハウを共有したがらないという会社も多いのではないでしょうか?
評価が売上連動かつ相対評価であれば、誰かに自分のノウハウを渡すことで自分が損をしてしまうこともあるので、自分の成功事例を進んで話す人は出てこなくなりそうです。
しかし、組織としては一部の人間だけが成果を出すのではなく、組織全体として高い成果を発揮する方が生産性は良いですし、リスクも少ないです。誰か1人だけが組織の成績を引っ張っている状況ができてしまうと、その人が抜けたときの業績に与える影響が非常に大きいからです。
では、その時に何が求められるのか?それは、組織として良い仕事を共有することの意味と、共有することが個人へ与える影響をどう設定し、伝えるかです。
忙しい業務の合間を縫って共有をするのです。自分にメリットがなければ共有はしませんし、言語化すること、ましてや発表するためには相当なパワーがかかります。
だからこそ、リクルートでやっていたのは、共有を評価の一部にすること、表彰されることを憧れにすることでした。つまり、仕組みと仕掛けで人を動かしていました。
今回のタイトル写真は、リクルート全体での年間表彰TOPGUN AWARDの表彰式の写真です。現在は表彰のされ方も変わっているそうですが、私が在籍していた当時は、約20,000人の営業の中から、年間10人が選ばれるという形でした。
東京国際フォーラムの舞台で、たくさんの人から大きな拍手を受けてプレゼンしている先輩達に憧れ、いつか自分も立ちたいと思い、ひたすら自分の仕事を磨き続けていました。
そうやって、優秀な人間が自分の仕事を棚卸しした上で共有し、それを目指したいと思える状態を作ることによって、組織全体の価値提供レベルが引き上がっていくのです。
成功事例の中で、何を抽出するのか?
実際に共有するとなった時に、どんなものを抽出する必要があるのか?いわゆる仕事の棚卸しが非常に大事なポイントになります。
例えば「プレゼン大会をやりましょう!」となった時に、発表内容が全員微妙だったらもう次はありません。「どうせ・・・」が出た瞬間にみんな目指さなくなるからです。権威付けのためにも、発表される内容が大事になるのです。
かと言って、「朝から晩まで寝ずに頑張りました!」「毎日お客さんのところに飛び込みました!」だけだと意味がありません。何を頑張ったのか、それがどのように成功に寄与したのかが言語化されている必要があります。
大事なのは、汎用性と再現性です。みんなが使えるのか、応用を効かせられるのか。そして、誰がやってもその手順で同様の効果が出るのかがポイントなのです。
ただし、テクニックの披露だけでは不十分です。どんなことを考えたのか、何を想ったのか、何を問題と捉えどのような課題設定を行ったのか。行動(=打ち手)の裏にある背景や考え・思い至りが重要です。
実は、営業力の高い人はこれを1人でやっています。過去の自分の成功体験を棚卸しし、何がポイントだったのか、何が成功要因だったのかを丁寧に振り返り、次に同様のケースが起こった時に同じことができるようにしています。
そういう人達は、成長意欲が高く、もっといい仕事ができないかを常に模索し続けています。その上で、自身に足りない要素も正しく認識しています。だからこそ、他の人の成功事例や成功体験に敏感になりますし、新しいインプットを貪欲に繰り返します。
先日のトップインタビュー後の記事でも書きましたが、学習志向と深い内省によって、アンラーニングを積極的に行っているのです。個人の寄せ集めの”集団”ではなく、人と人が機能し合う”組織”として戦うためには、所属している個人の強み(個人スキル)を掛け合わせ、組織スキルを増幅させていくことが重要になります。
それによって、継続的に成長し続けられる組織、競争優位性が高い組織を構築することが可能になると考えています。